今回の記事は、国際緊急援助隊に関係する記事です。
初めに、2月6日にトルコ南東部で発生した大地震で被災された現地の方へのお見舞いを申し上げると共に、現在トルコで救助活動をされている国際緊急援助隊・救助チームの隊員の方々の無事をお祈りします。
こんにちわ、CE藤川です

日本をはじめ、世界各地において大規模災害が多く発生していますが、特に途上国といわれている地域では、経済・社会基盤が脆弱である背景から大規模災害時には、より大きな被害を受け易い可能性が考えられます。日本にはそう言った地域への様々な救助や支援体制・組織などがあります。
今回、訓練に参加したJDR(JAPAN DISASTER RELIEF TEAM;国際緊急援助隊)は、災害大国でもある日本の災害の歴史から蓄積されてきた経験を途上国の災害救助に活かしたいとの思いから、1980代に医療チームの派遣を中心とする国際緊急援助活動がスタートした日本の緊急援助体制の1つです。
現在は「国際緊急援助隊の派遣に関する法律(通常JDR法)」の制定を経て、国際緊急援助隊【救助チーム・医療チーム・感染症対策チーム・専門家チーム・自衛隊部隊】として派遣されています。
この国際緊急援助隊の派遣活動や隊員の研修・訓練は、JICA(独立行政法人 国際協力機構)が実施しています。

-JICA(独立行政法人 国際協力機構)のホームページから引用-
自分はその中の医療チームに登録しており、医療チームの役割としては、被災者の診療にあたるとともに、必要に応じて疾患の感染予防や蔓延防止のための活動も行います。
救助チームの隊員の方は、主に警察庁・消防庁・海上保安庁と言った方々で構成されているので配属先から選抜されますが、医療チームは個人の意思で登録している「医師、看護師、薬剤師、医療調整員(臨床検査技師・臨床工学技士・理学療法士など)」の中から選抜されます。更に、外務省の職員や業務調整をされる業務調整員と言ったメンバーで構成されます。
また医療チームは派遣体制により、Type-1(外来患者への初期医療および巡回診療)とType-2(手術および入院機能)、スペシャリストセル(透析機能、外科)と言った分類がされており、現在医療チームは「このすべての能力があるチーム」としての認証をWHO(世界保健機関)から受けて国際登録をしています
JDR医療チームの訓練には、隊員登録をする際に行う「導入研修」、本登録された隊員が受講できる「中級研修」、そして今回のような「展開訓練」などと言ったいくつかの種類があります。
展開訓練では、仮想の国で地震が発生したという想定で被災地でのテントや資機材の組み立てから配置、医療チームが持っているすべての機能を使った診療、撤収まで、一連の流れを実働で試します。
今回の展開訓練は、Type-2として初めて実戦的に行われた訓練でした。
前置きが長くなりましたが・・・・
もうすでに約2ヶ月を過ぎてしまっていますが、昨年の11/22(火)~24(木)の日程で、中部国際空港(セントレア)の隣にある「Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)」にて行われたため、参加させて頂きました




今回の展開訓練は、11/22(火)~23(水)のA班、11/23(水)~24(木)のB班の2日程に分かれて実施されましたが、自分はA班で参加となりました。
受付後した後に、実際にJDR隊員として派遣される際に着用するユニフォーム(ベストと帽子など)を渡され、着用させて頂きました

今回、JICA側のご厚意で実際の派遣時のユニフォームを着用しての訓練に挑む事ができたそうです。
「日本の日の丸」が入っているので、改めて身の引き締まる思いですね


受付が終了し、全体へのブリーフィングなどが終了した後は、担当部門毎に分かれて自己紹介、そして訓練が開始となりました。
今回配属となった「サプライセンター部門」は、部門長(看護師)を含め全員で4名(1人欠席の方が見えたので本来は5名の予定でした)で、班員の構成と職種は、看護師さん(部門長)1名、薬剤師さん2名、臨床工学技士(自分)1名でした。
実際の被災地でも高度医療機器や医療器具を使用しますが、取扱説明書通りに使用できるとは限りません。また、現地の電気や燃料の確保が出来ない、電圧が異なる為使用できないと言う事態などが想定されます。そのため、手順や資機材の検証、被災地での活動のシミュレーションができる定期的な研修と訓練が重要になってきます。
今回の展開訓練では、仮想の国で地震が発生したという想定で、被災地へのテントや資機材の搬入から組み立てや配置、医療チームが持っているすべての機能を使った診療、撤収まで、一連の流れを実働で試す訓練が行われました。
と言う事で、まずは、成田から運ばれてきた大型トラック約10台分の実際の資機材を隊員全員で荷下ろしし、その後、大型エアーテント等を全員で展開し、サプライセンター部門やロジスティク部門を中心に最初に必要な資機材を各部署へ展開する形になりましたが、ここまでの作業がとてつもない時間を要しました・・・

しかし、実際の現地では体育館の様に整備された環境ではないと思われるため、もっと時間を要するだろうと言う事が分かったし、実際のイメージも作る事が出来たので個人的には良かったです


ちなみに、展開後はこんな感じになります。
また、線で囲われたテントが自分の担当した「サプライセンター部門」のテントでした

基本的に、実派遣時も全ての医療資機材・薬剤等は、サプライセンター部門から「貸出・返却」がされるため、サプライセンター部門のテントには大量の資機材が保管される事になります。



今回の資機材をテント内に配置したら、テント内は凄くカオスな状態になっていましたが、実はType-2の実派遣時は、もう少し医療資機材があるそうなので、もう少しスペースや配置の工夫などの改善点が必要であるとの見解は、サプライセンター部門の中での共通の認識となりましたし、前向きな意見がすぐに出る事も実際の資機材を用いた今回の訓練の成果ですね。
ある程度の展開が整ったあと、診療がスタートし、暫くしたところで、晩御飯タイムです

隊員同士交代で晩御飯をとります
晩御飯は災害用の非常食でしたが、自分は院内の災害対策委員もしており災害時の非常食にも馴染みがあったので、とても美味しく頂きました


食事の準備や色々な後方的なサポートは、ロジスティクス部門の隊員の方が請け負って下さり、本当に感謝しかありません

隊員の食事の準備の仕方や段取りなどは、自分の施設での災害時の対応の参考にもなりました


食事休憩の後は、部門ごとの振り返りと全体ミーティングを実施し、各自、寝床の準備となりました。
今回の訓練は、各隊員1個ずつ「ソロテント、コット、寝袋など」が準備されていたので、部門ごとに配置されている自分の場所を確認して設営しました(今回、テントは組み立てて頂いていました)

配置はこの様な感じで青枠の部分が、自分達サプライセンター部門の男性陣の場所となっていました。プライベート空間が確保されていたのは有難いですね

その後、明日の診療等の打ち合わせなどを済ませ22:00に消灯となりましたが、入院患者さん(模擬患者ですが)がいる設定であったため、病棟担当の隊員さんは夜勤帯の活動に移行します。
消灯となったのですが・・・・、実は、今回の展開訓練にはもう一つテーマがあり、それが「夜間運用」でした。
昼間結構疲れていたので、かなり寝落ちしていたのですが、トランシーバーから「緊急で透析を回す必要な患者さんがいるので、CEさんは本部テントに集合」との連絡が入りました。
今回CEさんは、手術部門とサプライセンター部門(自分です)に1人ずつ配属されていたのですが、どちらが担当するという相談をしていなかった事もあり、とりあえず、至急、テントに向かいました(直ぐに覚醒できたのでは、自分なりにビックリでした
)。
手術室部門のCEさんも見えており、とりあえず二人で透析の準備をするためにサプライセンター部門のテントへ物品等を取りに向かい、病棟テントへ向かいました。

夜間運用中は、こんな感じでした

そして、Drの指示を受け、透析を開始してから少ししたところで・・・・・
「大きな余震(今回のJDRの派遣は大規模地震に対しての救援活動の設定です)が起こった」という一斉アナウンスが入り、地震対策への訓練も実施されました。
他の隊員さん達は、各テントで入眠中の時間でしたが、皆さん迅速に起きて集合されていました。
実際、2015年に派遣されたネパール地震の時も活動期間中に大きな余震があったとの事でしたので、色々な場面を想定した訓練は大事になりますね

自分の施設での災害訓練の時も様々な場面を想定し、時には最悪の事態も想定した訓練も行うので、「(勝手に)うん、うん」と納得していました

その後は、本当に睡眠時間となり起床時間まで爆睡でした

翌朝は、熟睡出来た事もあり短時間の睡眠ですが、スッキリでした

その後は、朝食→振り返り→片付け・整理整頓(午後からB班の訓練があるので、その為の準備も兼ね。但し、今回の訓練では引継ぎ作業はなしでした)→全体講評・閉会式・記念撮影→解散と怒涛のスケジュールでした





全て終わり、解散前に「サプライセンター部門」の皆さんで記念写真をとりました


今回初めましてでしたが、直ぐに活動出来るあたり、さすが志が高いJDR隊員さん達ですね(笑)左から「薬剤師さん」、「薬剤師さん」、「看護師さん(部門長兼務)」、「臨床工学技士;自分(笑)」
そして、この薬剤師さんお二人は過去にJDR隊員としての派遣経験もあるとの事で、派遣時の事をお聞きする事が出来たのもありがたかったです

1泊2日の展開訓練ですが、あっという間に終わってしまったという印象でした。
実派遣では、1回の派遣で約2週間位活動すると思われるので、疲労や慣れない環境でのストレスとの闘いになると思います。そんな時は、協力隊時代のアフリカでの活動経験を生かす事が出来ればとも思っています!!
ちなみに、実際の派遣では、災害国からの派遣要請→派遣決定が決定します。
その後、「登録している隊員への通達→参加の意思表示」となりますが、それまでの時間が約2時間程度で派遣隊員決定し、連絡が来てその数時間後に成田空港に集合し、商用便やチャーター機で派遣と言った流れが概ねの派遣スケジュールとなるようです。
実際、派遣要請と隊員募集が起こった際は、現実的にはなかなか難しい所もありますが、可能な限り、配属先と相談して協力できればと思っています。
その為、こう言った展開訓練に参加し、他の隊員さんと一緒に活動し・お話しして、色々な知識や経験をできるだけ積んでスキルアップとモチベーションの維持を継続していきたいですね!
もし、当院のブログを見て、自分も参加してみたい方(非医療従事者でも可能です)は、是非JDR隊員への登録を検討してみて下さい
では~

